2019.10.21クリニック開業の心得
医院・クリニック開業までには多くのやることがあります。しかししっかりと手順を踏む事でその地域に根ざした、患者さんに愛される医院を開業することができます。
このページでは、開業を成功させるために必要な情報をまとめました。
開業の時期は、患者数の少ない4月や5月が多くなっています。
新規開業の場合は約1年前から計画を立てていきましょう。やるべきことがたくさんあるので、余裕を持ってスケジュールを組まれることをお勧めします。
ここからは、医院開業までの流れを初めから終わりまでの順に沿って、5つご紹介いたします。
開業に向けてまずやりたいことは、診療方針を考えるということ。
開業したあと、自分や医院がどんな姿になっていたいか?を思い浮かべながら、一度思いを紙に書き出してみるのがおすすめです。「どんな患者さんに、どんな治療やサービスを提供する医院を作りたいのか」が見えてきます。
最初に診療方針を考えておく事で、途中で様々な障害が出てきた時にも原点に立ち返ることができます。
開業地選びは集患にも直結するので、とても重要。
まずは開業するエリアを考え、それから開業コンサルタント会社や不動産会社などに依頼して物件や土地を探していくようになります。
失敗できないところなので、あらゆる情報を元に開業地を決定させていきます。では、開業地決定までの段取りを見ていきましょう。
関連記事:クリニックの開業地選定を成功させる鍵は診療圏調査?失敗しないための予備知識
すでにその地域に十分な数の医院があり、病院が飽和状態であるならば新しく作る病院の需要は少ないと言えます。他の場所での開業を検討する方が良いですね。
あるいは、他の病院と差がつくような付加価値や、サービスを提供する必要が出てくるでしょう。
開業したい場所近くの人口が多いと、その分来院患者数は増えます。しかし、人口が低いとそれだけ来院患者数は減るので、バランスを考える必要があります。
また10年・20年先を見越していくと、未来の病院運営状況も変わってくるでしょう。つまり人の数だけでなく年齢構成を知っておくことも必要なので、開業地したい場所周辺の調査をまずはじめに行います。
他にも、地域の人交通機関の状況を知ることが重要。徒歩・車・電車か、などによって必要とされる開業地が変わってきます。これは地域によって違うのでよく観察したいところです。
開業場所の形態は様々で、その地域の特性によっても変わってきます。多くは一戸建て・テナント・医療モール、といった入居先が一般的です。
関連記事:クリニックの開業地選定を成功させる鍵は診療圏調査?失敗しないための予備知識
「開業地の選定」と同時に行いたいのが、資金調達の方法を検討すること。医院を開業するにあたって多くの資金が必要なので、重要な段階です。
計画が立てられれば銀行から融資を受けることができますが、銀行から融資を受けるためにはいくつか知っておきたいことがあります。
関連記事: クリニック開業に向けて資金調達する方法の心得
医院の開業資金は、だいたい6000万~8000万円程かかると言われています。もちろん地域や診療科目、形態などによる違いはあるものの、最低でも6000万円はかかると見ておくと良いです。
ただ、融資を受けようとしても金融機関の担当者に「事業計画書」を提出し、OKが出ないと融資を受けられません。
次の項目では事業計画書について詳しく見ていきましょう。
「事業計画書」とは、以下の3つをまとめた書類です。
土地、建物、内装、医療機器、広告宣伝費など。それぞれにどのくらいの費用を使うのかを記したもの。
自己資金をいくら出すのか、いくら資金を借りる予定なのかを記したもの。
・開業後の収入見込み
(患者の予想単価×一日の来院患者数×診療日数)
・開業後の支出見込み
(医業にかかるお金、人件費など)
以上の収支計画を見て、銀行は「資金計画に無理がないか?」を判断します。
つまり、銀行は
・どんなものにどれだけのお金をかけるのか?
・資金をどうやって調達するのか?
・収支の見積もり、経営の計画
を知りたいわけです。これらを見て、銀行が融資をするかどうかを判断することになります。
少し大変のように思えますが、ここで「事業計画書」の作成を細かく立てておくと、あとで楽になります。銀行の融資を得られ、さらに今後の経営の指針とするためにも非常に役立つからです。
ただ、事業計画書を作成することは煩雑な作業になりますので、開業を多く手がけている開業コンサルタントや、税理士に作成してもらうのがおすすめです。
関連記事:開業コンサルタントが教える【病院・クリニックの資金計画】の立て方~診療科別~
開業準備の種版である、最終段階でやるべきことを挙げていきます。
開業にあたっては、保健所に「診療所開設届」を出す事と、厚生局に「保険医療機関指定申請」を出すなどが一般的です。他にもいくつかの行政機関への届け出が必要になってきます。
届け出は難しい事ではありませんが、内容が認められない、なんていう事もあるので、何度か相談しながら提出しましょう。
届出を出すポイントは、テナントの賃貸契約を結ぶ前に保健所に「診療所開設届」を出すこと。
「この場所で開業したい」と思っても、水周りがよくないなど条件が合わないと保健所から「NO」と言われることもあります。
関連記事:医院・クリニック開業には多くの申請手続き(届出)が必要!漏れなく申請するための予備知識
場所が決まったら、施工会社に内装工事を手配することになります。 基本的な内装は院長の診療方針・好みで決まりますが、来院するであろう患者さんのことも考慮した上で決めます。
最近では院内はもちろん、駐車場から入り口にかけてフラットに設計したりトイレをバリアフリー化することが多く求められます。
関連記事:外観やデザインよりも大切!クリニックの導線について解説
医療機器は、X線・エコー・内視鏡、更にCTやMRIなどはなどの中から自分の診療に必要なものを選ぶのが基本です。
その他、どの科にも共通すると言えるのが電子カルテです。電子カルテを導入する医院は増えており、新規開業する医院ではほぼ必須となりつつあります。
関連記事:失敗しない医療機器の選び方!メーカーや種類を比較する良い方法は?
一般の店舗と同じで、集患はとても重要なポイントです。今最も期待できる集客方法は、「ホームページ」と「口コミ」の2つ。
病院にもホームページは必須ですが、自分で一から作り始めるのは大変なこと。定期的に更新作業もしていかなければならないので、時間・人員のコストがかかるので、専門の業者に頼むと便利です。
「どんな治療が得意なのか」を患者さんにわかりやすく伝わってくるホームページは、集患に大変効果的です。
病院のファンができれば、自然と良い口コミが広がっていきます。即効性はないですが、長く親しまれる病院として最大に重要な集患の手段です。
本格的なオープンの前に地域の方や関係者を招待する「内覧会」を行うのも、医院を知ってもらう機会を増やすことができるので有効です。
関連記事:クリニックを開業したら内覧会を計画しよう!圧倒的に集患するポイント6つ
医院のスタッフはいわば医院の顔ですので、スタッフの採用は重要になります。求人誌、新聞の折り込み広告、ウェブの人材募集サイトなどに必要な人材を募集します。
中でも看護師はどの医療機関でも不足状態なので、すぐには決定しないこともあるので注意が必要です。
関連記事:採用前に確認しよう! 医療現場の業務内容に適した人材を採用するには?
医院開業の流れを5つに分けて解説いたしました。結構なボリュームがあるので、一人で抱え込んで本業に支障が出てしまっては元も子もありません。
医院開業までの流れのすべてを全て一人で行う必要はなく、多くの部分を代行してくれる「開業サポート会社」の手を借りるという手もあります。
関連記事:本当に頼りになる医業コンサルタントとは?
ただ、受けられるサービスの内容は開業サポート会社によって異なるので、慎重に選ぶ必要があります。
迷った時には、複数の開業コンサルタントに相談してみましょう。その上で「この会社になら医院開業を任せられる」というパートナーを見つけ、開業プランをそれぞれ提案してもらうことをお勧めします。
開業は一大イベントとなります。慎重に、かつスムーズに進められると良いですね。