2019.12.05クリニック開業の心得
診療所(クリニック)の集患において、待合室は非常に重要な要素のひとつです。なかでも小さな子どもが集まる小児科では待ち時間の過ごし方がより重視されるため、配慮の行き届いた設計が必要になります。
この記事では、3つのポイントに焦点を当てて解説します。
子どもを連れてくる保護者がなによりも心配するのは、二次感染です。
「気になる症状だから診てもらいたいけど、インフルエンザをもらってきてしまったらどうしよう」
保護者は小児科受診にあたり、常にそんなジレンマを抱えています。
・感染症であることが判明している
・感染症が疑われる発疹がある
・38度以上の発熱がある
といった条件を決め、隔離用の待合室とトイレを用意するとよいでしょう。
また、予防接種用の時間帯を区切っている小児科は多いですが、入口と待合室も分けるとより大きな安心感を与えることができます。
設計だけでなく備品についても考慮が必要で、子ども用の玩具を通して感染するリスクも避けなくてはなりません。
だからといって何も置かないわけにはいかないのが小児科の難しいところですが、日々の消毒は欠かさないようにしましょう。さらに、保護者が自由に使える消毒グッズをおいておくのも効果的です。
ぬいぐるみ類は子どもに人気ですが、拭き取りでの消毒が難しいですし、繊維くずが咳を誘発することもあるのでおすすめはできません。
小児科の特徴は、患者に付き添いがいることです。
両親揃って付き添うことは少ないですが、平日であればお留守番の難しいきょうだいが一緒に来ることは珍しくありません。体調の悪い子どもが寝転がりたがることもあります。
つまり、想定している患者数の2〜3倍の人数を収容できる待合室でなければいけないということになります。
また、遊び場的なスペースがあると待合室の雰囲気は明るくキッズフレンドリーな印象になりますが、小児科は他のお子さんとの接触が歓迎される場所ではありません。
産科の待合室とはその点で大きく違いますので、スペースに余裕があるなら患者同士の距離を離せるように活用するほうが有益でしょう。
大人の患者が集まる内科や整形外科のような診療所では、壁に沿ってソファをぐるりと並べたり、ベンチシートを一方向に向けて何列か並べたりするのが一般的です。
しかし、小児科の待合室は患者である子どもとその保護者が過ごす場所。病気の子どもは機嫌が悪くナーバスになっていることも多いので、待合室は家族の居場所としても機能する必要があります。
つまり、他人の視線をあまり意識せず家族が近い距離でプライベート空間を作れる席配置が理想です。
椅子をただまっすぐ並べるのではなく、L字型やコの字型、背中合わせの配置を工夫しましょう。
このあたりは設計事務所にノウハウがあるでしょうから、スペースを最大限有効活用できるよう相談してください。
3つのポイントを紹介してきましたが、もちろん温かみのある雰囲気の内装は前提です。
必ずしもキャラクターものやアニマル柄で演出する必要はありませんが、モノトーンや濃い色よりもナチュラルなやわらかいカラーや落ち着いたウッディな雰囲気が小児科には合っています。
親子が安心して過ごせる、明るく清潔な待合室を作ってください。