2019.11.19トレンド・ニュース
日本人の平均寿命は80歳を超え、ほとんどの方が老いてから亡くなる時代になっています。いまや「治療」だけでなく「看取り」も、医師の重要な仕事のひとつだと言えるでしょう。
2025年問題も控えるなか、在宅医療(訪問診療)はますます注目度を増しています。
いままで日本の社会保障を支えてきた団塊の世代が、全員後期高齢者に達するのが2025年。介護・医療費の急増が懸念されることから「2025年問題」とも言われ、政府は入院用ベッドを10万床以上減らす計画を立てて在宅医療へのシフトを推進しています。
とはいえ、在宅医療を進める意味は介護・医療費を抑えることだけではありません。
・従来の入院ありきの治療体制では、
本当に入院治療が必要な患者を診られなくなること。
・慢性疾患と長くつきあっていく高齢者にとっては、
通院や入院よりも訪問診療が適しているケースが多いこと。
・「最期は住み慣れた自宅で過ごしたい」と考えている人の割合が多いこと。
なども挙げられます。
このように在宅医療のニーズが非常に高まっている状況ですが、開業医が訪問診療事業に参入するのはアリなのでしょうか?
少子化で人口が減っていく日本。過疎化による無医村が社会問題となっていますが、逆に都市部では開業医は飽和状態です。集患に四苦八苦している医師も多く、もはや開業医が安定した仕事とは言い切れません。
その点、ニーズのある訪問診療は地域に周知できれば集患力があります。特定曜日の特定時間帯を訪問診療に充てるという形での開業も有効でしょう。
また、訪問診療事業だけで開業するのであれば設備の整った診療所を用意する必要はありません。地域によっては訪問診療事業の助成金を受け取ることもできるので、資金面でのハードルは低いと言えます。
在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所の認可を受けなければ、診療報酬はやや低いものの24時間体制を整える義務はありません。しかし在宅医療では看取りも重要な医師の役目なので、時間外診療・休日診療はしないと割り切れるケースばかりではないでしょう。
そして事業を拡大するとなると在宅療養支援診療所の認可は避けられません。365日24時間体制をともに支える医師や看護師、薬剤師、介護士、管理栄養士、ケアマネジャーらとチームを作る必要があります。
訪問診療は、医師の心身に大きな負担がかかります。
また、訪問診療は目に付く看板を掲げるわけではないので、勝手に周知されることは期待できません。提携先を探している病院や訪問看護ステーション、有料老人ホーム、サービス付高齢者向住宅などへの営業活動が必要です。
患者とその家族に寄り添い、人生をまっとうするまで見届けるーー
在宅医療は医師の原点ともいえる仕事で、これが自分の使命だと高齢の医師が始めることも少なくありません。一方で、体力のある30代の若手医師の参入も目立っています。
そして、在宅医療を必要とする高齢者の数は日本の人口減少とともに減っていきます。今はニーズのある事業ですが、遠からず頭打ちになるというわけです。いずれは訪問診療をと考えているのであれば、決断と実行は早いほうがいいでしょう。