2025.01.24トレンド・ニュース
現在日本では、一部の地域に医師が集中し、他方では医師が不足しているという医師偏在問題が顕著化しています。地域間における医療格差は広がりつつあり、国を挙げて対策に取り組む必要があります。
2024年9月30日、厚生労働省の有識者検討会において医師偏在問題の是正対策が話し合われ、「開業医が多い地域での新規開業を許可制にする」という案が提起されました。都市部で多くの医師が開業し、地方の医師が不足してしまう現状に、メスが入れられようとしています。
これにより、クリニック開業をめぐる状況が、今後変わっていくことが考えられます。これから開業を考えている方は、この件について情報を収集しておきましょう。
参考:第9回 新たな地域医療構想等に関する検討会(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_436723_00010.html
参考:医師偏在是正対策について
東京や大阪といった大都市には地方から多くの人が集まるため、クリニックにとっては集患がしやすく、開業を希望する医師も後を絶ちません。一方で、地方の医師不足は深刻です。
地方で開業する多くのクリニックでは後継者の問題を抱えており、院長の引退とともに閉院せざるを得ない状況に陥っています。こうして地方の若い医師が減少すると、地域の医療体制が脆弱化し、住民の健康や生活に深刻な影響が出ると考えられます。
新規開業の制限には、医師が一部の地域に集中するのを防ぐことで、過疎地の医師数を確保し、医療の行き届かない地域を作らないようにする目的があるのです。
では、もしこのまま医師の都市部集中化が進むとどのようになるのか、考えてみましょう。
地方において医師の高齢化が進んだり、クリニックが減少したりすると、数少ない医療機関に患者が集まってしまいます。その結果、対応が不十分になるなど医療現場の環境が悪化し、住民の生活に大きな影響を与えると考えられます。
これから結婚・出産を控える若い世代が、医療体制の充実した都市部へと移住せざるを得ない状況となり、地方の過疎化がさらに進む可能性が考えられます。またこれに伴い、若者が少ない地域では経済活動も縮小し、地域全体の活力も失ってしまうことでしょう。
令和6年9月には厚生労働省主導による医師偏在対策推進本部が始動し、12月には具体的な対策案が提示されました。
規制がいつ始まるかについての具体的な明言はされていませんが、今後クリニックの開業をお考えの方にとっては直接的な影響のある問題ですので、医師偏在是正対策について常に情報収集していきましょう。
医師偏在是正に向けた総合的な対策が施行されれば、現状で医師が不足している地域にとっては、開業を支援する内容になると考えられます。この案が法律として成立されることにより、地方への開業資金の補助金制度などが発生するようであれば、これから開業される方にとっては朗報となるでしょう。
資料:医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案についての主な論点https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43208.html
医師偏在是正対策は、国民全体の暮らしを守るために欠かせない政策であり、今後も継続的な取り組みと改善が進められていくと考えられます。一方で、医師偏在の問題は根深く、複雑な問題が絡み合うため、解決に向けて未だ多くの課題が残っているのも事実です。
国が具体的にどのような対策を進めていくのか、今後も注視する必要がありそうです。