2023.04.16トレンド・ニュース
ユニバーサルデザインとは、文化や言語や国籍の違い、年齢・性別・能力の差異、障がいの有無などに関わらず、出来るかぎり幅広い人々に適応するように設定されたデザインのこと。現代社会では、施設や製品や情報などの設計を、最初から全ての人が使いやすいよう設計することが求められます。
現在では様々な建築や商品、視覚的にも様々なシーンで採用されているユニバーサルデザイン。クリニックの新規開業時やリフォームの際に、医療の現場にどのように取り入れる必要があるのか、デメリットもふまえてご紹介していきます。
バリアフリーとは、ある特定の人にとって障害(バリア)となるものを取り除くことです。もともとは建築の分野で使われてきた用語で、長い間「段差などの障害を除去する」意味で使われてきました。
ユニバーサルデザインの考え方は、バリアフリーとは少し違います。バリアフリーが障がいのある方や高齢者など「特定の誰かにも使いやすいように」考案されるのとは異なり、ユニバーサルデザインは、老若男女問わず全ての人が使いやすいデザインとして設計されます。ある意味、バリアフリーはユニバーサルデザインの一部と考えることもできるでしょう。
視覚障がいのある方、高齢の方はもちろん、認知機能に衰えのある方や、日本語を解さない外国の方や幼い子どもにもわかりやすいような案内サインを導入しましょう。
そのためにはまず、遠くからでも認識できるよう、明確な色使いで大きく表示することが必要です。誰にでも理解しやすいよう、文字だけではなく、イラストやピクトグラムを使用するものいいでしょう。また個々の身長差も考慮し、どなたにも見やすい位置に案内サインを設置することも重要です。
院内での動線はもちろん、エントランスにたどり着く前からの患者の動きを想定し、安全で効率のいい動線を考えましょう。車での来院を想定されているクリニックであれば、公道から駐車場へのアプローチにも配慮が必要です。また、雨の日もできるだけ濡れずに駐車場から院内に移動できるような工夫があるといいでしょう。
院内に入ったらすぐに受付ができるよう動線を設定します。受付にはスタッフが常駐していますので、手助けの必要な患者にすぐ気付くことができます。
誰もが安全に利用できるクリニックであるために、不要な段差はなくしたり、滑りにくい床材を使用したり、スロープや手摺りを設置するなどの基本をしっかりと押えましょう。扉は引き戸にすると、どなたにも使いやすく、うっかり事故の防止にも繋がります。クリニック内に充分な明るさを確保するために採光と照明を整えることも、利用者の安全に繋がります。
また平常時だけではなく、地震などの非常時に安全であるかという点も重要です。
ユニバーサルデザインの唯一のデメリットとして挙げられるのは、デザイン性の低さです。全ての人が使いやすいデザインを追求すると、特徴のないデザインになりやすいのです。
出入り口の扉を例にしてみましょう。回転式のドアのような特徴的なエントランスは人目を惹きますが、小さなお子さまや高齢者、車いすの使用者にとっては使いにくいものになってしまいます。一方、ユニバーサルデザインで代表的な両開きの自動ドアは、あまりにも一般的で、見かける機会も多く、特徴的なデザインとは言えません。
デザイン性と両立させたい場合は、ユニバーサルデザインを熟知した経験豊富な建築士に相談してみましょう。
ユニバーサルデザインが充実するということは、社会全体が暮らしやすい環境になるといういうこと。それはクリニックにとっても同様です。来院される患者は老若男女、あらゆる属性や状態の方がいらっしゃいます。全ての方にとって直感的に使いやすいユニバーサルデザインを採用することによって「良い病院」という印象を持たれ、総合的な信頼度が高まります
ユニバーサルデザインは、今後のクリニックに必要不可欠な要素となるでしょう。すでにクリニックを経営されている方も、この機会に自院の状況を見直されてはいかがでしょうか。