医療広告チェックリスト ― 違反を防ぐための実践ポイント

2025.12.12成功するクリニック経営

医療広告チェックリスト ― 違反を防ぐための実践ポイント

今回も前回に引き続き、医療広告ガイドラインに関して考えていきます。

医療広告のルールは一見シンプルに見えて、実務に落とし込むと意外に複雑です。今回は、クリニックが日常的に使える自己点検チェックリストの形で、違反を未然に防ぐための実践的なポイントを整理します。

まず確認すべき掲載内容チェックリスト

広告違反の多くは、掲載してはいけない情報を知らないことから生じます。まずは次の項目を確認しましょう。

治療の効果・成功率を強調していないか
→ 「必ず治る」「痛くない」「効果が高い」など、断定的表現は禁止。

比較表現を使っていないか
→ 「地域No.1」「他院より優れている」などは客観的根拠が必要。

体験談・ビフォーアフター写真を掲載していないか
→ 患者の感想や治療結果を広告目的で使用するのは原則NG。

未承認医薬品・治療法の表記がないか
→ 海外で承認されていても、日本未承認の場合は必ず明示が必要。

価格表示が不明確でないか
→ 「〇〇円~」のような曖昧表記はトラブルのもと。

これらに1つでも該当すれば、すぐに修正対象です。特に「治療効果」「体験談」「価格表示」の3点は、違反事例の大半を占めています。

ホームページ・SNS別に見る注意ポイント

ホームページやSNSなどインターネットを通じた発信は、手軽であるがゆえ、より注意が必要です。媒体ごとに次のような違いを意識しましょう。

ホームページ

医療法上の広告とみなされるため、掲載内容は最も厳格に管理が必要。更新時には、診療科目・医師資格・料金体系などを常に最新情報に保ちましょう。

Instagram/Facebook

「症例紹介」や「患者の声」を投稿する場合は、医療広告扱いになる可能性が高いです。施術写真やコメント投稿は慎重に行いましょう。

YouTube

動画は“体験談”や“効果訴求”と判断されやすい媒体。教育・啓発目的であっても、発言内容に客観的根拠を添える工夫を。

特にSNSでは、日常の様子を伝えるつもりが広告扱いになるケースもあります。掲載前に確認し、「患者誘導性があるか」で判断することが大切です。

リスクを減らすための院内運用ルール

広告ガイドラインは知っているだけでは不十分。院内ルールとして運用できるかがポイントです。
効果的な運用体制は次のように構築します。

1️⃣ 発信前のダブルチェック体制
SNS担当や外注ライターが作成した内容を、必ず医師または管理者が最終確認。

2️⃣ 定期的なガイドライン研修
スタッフもガイドラインの基本を共有し、違反リスクを他人事にしない。

3️⃣ 修正・削除の基準を明確化
厚労省・自治体からの指摘に備え、速やかに対応できるプロセスを整える。

4️⃣ 外部委託先との契約明文化
広告代理店やウェブ制作会社にも遵守義務を明記し、責任分担を明確に。

特にSNS運用をスタッフが担当する場合、ガイドライン遵守を意識して投稿することを徹底しましょう。

まとめ

医療広告の目的は、クリニックを縛ることではなく、「正しい情報発信によって患者が安心して選べる環境を整えること」です。つまり、ガイドライン遵守は信頼を守るブランディング行為でもあるのです。
チェックリストを活用して、発信の前に一旦考える習慣をつけるだけでも、トラブルの多くは防げます。安全で誠実な情報発信を続けることこそ、これからの医療経営における最大の信頼戦略です。

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