2024.10.25成功するクリニック経営
昨今の人口減少に加え、医療サービスに対する需要が増加し続けていることで、医療従事者の業務の負担は年々大きくなっています。業務量と責任の重さは、離職率の高さを助長していると考えられます。そして、それに対する賃金が低いというのも人材不足の大きな理由とされています。
優秀なスタッフを確保するためには、労働環境を整えると同時に、適切な給与を支払うことが重要になります。スタッフの能力と働きに見合った評価をすることで、信頼関係を築くことができ、離職を抑えることができるでしょう。
それでは、適切な賃金とは、具体的にどの程度の金額を指すのでしょうか。
まずはあらかじめ、相場の情報を得ておきましょう。現在はインターネットが普及していることで、求人サイトも充実しており、近隣のクリニックの給与額などを調べることができます。
医療事務や看護師の業務経験や年齢、資格、専門性の高さによっても給与の相場は異なりますので、総合的に考慮して、目安金額を決めておくといいでしょう。
給与額を決定するうえで注意するべきなのは、スタッフに不公平を感じさせないことです。「あの人はいくら貰っている」等、給与に関する生々しい噂がクリニック内で流れることで、人間関係を悪くしてしまうこともあります。
給与額を決めるうえで、個々の能力やスキル、ライフスタイルを考慮し調整をすることはよくありますが、この作業には必ず客観性と根拠が必要となります。院長のさじ加減で決めることは避けましょう。
給与の調整をするためには、各種手当を設けるといいでしょう。役職手当や職責手当、家族手当や通勤・住宅手当などの名目化した手当は、給与算定の根拠となります。手当で金額を調整することで、公平性がある程度担保されますので、スタッフも不満を感じにくくなるでしょう。
個々の貢献に対し、賞与として対価を支払うことも可能です。労働基準法上は、医療機関に限らず事業主(会社やクリニック)にはボーナスの支給義務はないとされていますが、従業員にとっては自分が評価された証であり、労働へのモチベーションを上げる効果があります。ボーナスを支給する場合は、支給条件・支給時期・対象者などのルールを、あらかじめ就業規則や給与規定に定めておきましょう。その際、賞与はクリニックの業績次第であることを前提としておくといいでしょう。
ただし、ボーナスを受け取ってすぐに退職してしまうケースもありますので、注意が必要です。同じタイミングでスタッフが一斉に辞めてしまうことも懸念されますので、日頃から密なコミュニケーションを心がけましょう。
賃金や手当、賞与に関しては、採用時に事前に取り決め、雇用契約書に明記したうえで、必ず従業員の承諾を得ておきます。引き抜きなど縁故採用の場合であっても、必ず雇用契約書を交わしましょう。口約束で採用すると「言った言わない」で問題が深刻化してしまう可能性があります。
雇用契約書の作り方がわからない場合、今の契約書に不安がある場合は、社労士や医療コンサル会社に相談してみるといいでしょう。
クリニックには働き手がいないと業務が成り立ちません。スタッフがやりがいを持ち、仕事に専念するために、給与面での不満はできるだけ払拭していきましょう。特に「他のスタッフと待遇が違う」などの不公平感は、業務上の不満に直結します。あらかじめ根拠を明示しておくことで予防しましょう。