2020.07.30成功するクリニック経営
クリニック開業には個人開業医と医療法人の2つの方法があり、それぞれ課せられる税金や税率が異なります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、それぞれの特徴を良く理解した上で、どちらの方法で開業すべきなのか決定しましょう。
この記事ではまず、個人開業医の税金のポイントについて解説します。
個人開業医にかかる税金で最大のものが、所得税です。所得税は、10種類に分類した個人の所得ごとに、所得の計算方法が定められています。個人開業医の開業に対する所得は、事業所得になります。
青色申告では、配偶者などの家族従業員に支払った給与や特別控除額として、最高65万円の控除が可能です。さらに、個人開業医で年間の保険診療収入額が5,000万円以下かつ保険収入と自由診療収入の合計が7,000万円以下の場合、租税特別措置法26条に基づいて計算した概算経費の額を使って、経費を計算することが認められています。
実際にかかった経費よりも概算経費の額のほうが大きい場合は、この方法で計算したほうが有利になります。
所得税は、扶養控除や基礎控除などの所得控除額を計算し、その所得の金額によって決められた5~50%の所得税率をかけて課税額を計算します。
医療経済実態調査によると、個人開業医の平均所得は約2,887万円となっているため、50%の税率が適用されることが多いです。所得の50%も税金で持っていかれるとなると、とても高く感じる方もいるのではないでしょうか?
個人開業医の所得には、個人住民税もかかります。個人住民税は、所得税で計算した所得金額から、住民税で定められた所得控除を計算した住民税の課税所得金額に、一律10%の税率をかけて計算します。
個人開業医の事業所得のうち、保険診療以外の収入から生じた所得には、事業税が課税されます。事業税は事業所得に一定の調整をして、そこから290万円を控除して5%の税率をかけて計算します。
なお、課税された事業税は、事業所得の金額の計算上、経費に算入できることを覚えておきましょう。
基準期間の課税売上(前々年の課税売上)が1,000万円を超える場合、その年の課税売上に対して消費税の納税義務が生じます。
基準期間の課税売上が5,000万円以下の場合は、簡易課税という簡便な方法で消費税が計算できます。個人開業医の場合は、簡易課税で計算したほうが有利になる場合が多いです。
土地を購入してクリニックを建てて開業した場合は、不動産取得税がかかります。不動産取得税は、土地建物の固定資産税評価に原則4%の税率をかけて計算します。
ただし、医院併用住宅の場合、住宅部分には軽減措置が取られているので確認してみてください。
土地や建物を取得あるいは建築して開業した場合、その土地や建物に対して、その年1月1日の固定資産税評価額をもとに計算した固定資産税と都市計画税がかかります。
個人開業医が亡くなると、その時点で残っている財産に対して相続税が課せられます。相続税の課税対象になる財産は、不動産や事業用資金、預金、有価証券、生命保険金などです。これらを死亡時の相続税評価額で計算し、そこから故人の借金や未払金、葬式費用などを控除して遺産総額を計算します。
遺産総額から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額を控除して、相続税の課税価格を計算し、課税価格と法定相続人の数によって、10~55%の相続税率を適用して計算します。
個人開業医は資産家であることが多いため、相続税は多額になる傾向があります。
また事業承継する場合にも、土地や建物や医療機器が遺産と見なされ、課税対象となるため、相続税の負担が大きくなります。
この記事では、個人開業医としてクリニックを開業した際にかかる税金について解説しました。
医療経済実態調査では、個人開業医の平均所得は約2,887万円で、所得税だけでも50%の税率が課せられることになります。こうした面からも、個人開業医ではなく、医療法人でクリニック開業する方も多いです。
しかし年間の所得額によっては、個人開業医の方がお得な場合もあります。開業前に見込み所得を想定して、最適な開業方法を選んでください。