クリニックを開業 資金調達は方向性を見極めてから-内科編-

2016.06.02開業準備

クリニックを開業 資金調達は方向性を見極めてから-内科編-

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医師の専門性はいろいろありますが、中でも“内科”というのは、もっとも診療範囲の広い科かもしれません。“内科”クリニックを開業するときに気を付けたいポイントと、開業資金や診療報酬による収入の目安を考えてみましょう。

“内科”は分かりやすい反面、受診するかを考えてしまう科

“内科”という標榜科は、「あらゆる体調不良を診てくれるかもしれない」という期待感がある反面、「どこまでの専門性があるのか」が分かりにくいという印象があります。
例えば“一般内科”の場合、一般とはどこまでなのか、自分の今の症状は“一般内科”に該当するのかどうか、こういったことが患者さんたちには分かりにくいことがあります。
その一方で、例えば“糖尿病内科”などと固定した場合、それ以外の疾患については診てもらえないのではないか、という印象を与えることもあります。
特に、複数の慢性疾患をもつ高齢患者さんなどは、できれば通院するクリニックは少ない方が良いですし、「高血圧と糖尿病の両方を診てほしい」というケースもあるでしょう。
また、土地柄によっても印象は変わってきます。クリニックが過密状態にあるような地域であれば、むしろ専門性を前面に出した方が良いケースがあります。逆に人口(=患者数)や競合するクリニックが少ないような地域であれば、“内科・小児科”と標榜すれば、家族全員で受診することがありますし、あえて“内科”にするだけで、複数疾患をもつ高齢患者さんを呼び込むこともできます。
ただしこの場合、必ずしも“内科”で診療できる範囲の患者さんだけが受診するとは限りません。精神科・心療内科の患者さんが来る可能性がありますし、ちょっとしたケガや打撲などに対応してほしい外科(あるいは整形外科)の患者さんが来るかもしれません。

内科の開業資金はいくら?

内科は、実は一番幅が広いかもしれません。同じ内科でも、呼吸器が得意なのか、循環器が得意なのか、最近その数が増えつつある糖尿病専門医なのか、その専門分野によっても違ってきます。
例えば、消化器内科であれば、内視鏡に関する医療機器はそろえたいですよね。循環器であれば、心エコー検査は準備しておきたいのではないでしょうか。
そうなると、比較的高額になる医療機器も、それなりに調達しなくてはなりません。
これらを加味すると、おおよその資金の目安は以下のようになります。戸建てで開業する場合
土地家屋代金 + 什器・備品 + 比較的高額な医療機器 = 6,000~8,000万円
さらに、開業から1年くらいの運転資金を1,000万円と考えると、7,000~9,000万円

ビル内の医療モールなどで開業する場合

内装費用 + 什器・備品 + 比較的高額な医療機器 = 3,000~5,000万円
さらに、開業から1年くらいの運転資金を1,000万円と考えると、4,000~6,000万円
ただし、これらは比較的高額な医療機器を、最初から導入する場合です。それが無い場合は、ここから1,000万円程度は差し引いても良いかもしれません。

 

“内科”は、診療可能な範囲をあらかじめ決めておくこと

前述のように、標榜の仕方や開業する地域によって、来院する患者さんの状況はまちまちです。あえて“内科”と標榜するのであれば、診療可能な範囲を、あらかじめ決めておくことをおススメします。例えば、次のような例も考えられるのではないでしょうか。

高齢率が高く、高齢患者さんが多い地域

・標榜するのは“一般内科”
・診療可能な範囲は、”消化器・循環器・内分泌(糖尿病)・呼吸器の各内科”
(精神科・心療内科、脳神経内科、その他の外科系は範囲外)
・在宅診療も一部取り入れることで、通院が困難な患者さん、在宅療養中の患者さんを集患する

人件費に直結する“開業スタッフ”選びは慎重に

クリニックの開業に向け、スタッフの雇用を行います。ここでも「診療範囲をどこまでとするか」という判断が、オープニングスタッフとして、開業時に雇用するスタッフの職種や人数に影響してきます。

循環器疾患や内分泌疾患を診療範囲に含める場合

・開業する時点で、採血や計測などを行える看護師が必要
・患者指導に重きを置く場合は、専門的な知識をもつ看護師を雇用する方が良い

内視鏡検査を診療範囲に含める場合

・内視鏡の扱いに慣れている看護師が1名以上は必要

超音波検査、心電図計測などを診療範囲に含める場合

・これらの機器の扱いに慣れている看護師や、検査技師を雇用すると良い

特に、内視鏡検査や超音波検査・心電図検査などを診療範囲に含める場合は、それぞれの医療機器をそろえるための開業資金が必要になります。
また、開業後に経営が軌道にのる数か月間は、患者数が思うように伸びなくても、開業時からのスタッフには、それぞれの職種に見合った報酬を払う必要があります。
これらのことを加味しながら、クリニックの方向性を決めておくと良いでしょう。

開業後は、方向性を決めて安定収入を目指す

現在の日本は、「病院から在宅へ」という動きが活発化しており、診療報酬の改訂でも、在宅診療に関する部分が大きく変わることがあります。特に内科の場合は、診療範囲を広くすることができますので、今後は在宅関連の診療も行っていくと収入拡大が期待できます。
厚生労働省が行っている「第20回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」によると、1か月あたりのおおよその収支は以下のようになっています。
個人クリニック_tableいかがでしょうか。
内科のクリニックの開業資金は、診療内容によって大きく変わってきます。例えば内視鏡を行うのであればそれなりに器械を揃える資金が必要ですし、開業後は回転率を上げることも考えなくてはなりません。
ポイントとなるのは「どこまでを診療範囲とするか」という、クリニックそのもののコンセプトをしっかりと定めておくことではないでしょうか。

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