2016.06.29開業準備
そもそも、クリニックの収入は保険診療によるものが大半を占めるわけですから、患者数を予測することで、見込まれる収入はおおよその予測が立ちますね。これに見合うだけの投資計画を立てなければ、収支としてはマイナスになってしまい、夢の「クリニック開業」も、数年であっけなく終了してしまう可能性があります。
こうならないために必要なのが、開業前に行う「事業計画の立案」なのです。
1.診療圏調査の結果を元に、市場分析による来院患者数を予測し、それに基づく収入の予測を立てること
2.診療所の建築・内装工事、医療機器の購入費用、運転資金などの初期投資額を算出し、自己資金以外に調達が必要となる、資金額を算出する
3.人件費、診療材料費、建物、土地の賃料、税金などの支出を勘案しながら、どの程度の収益を見込めるかをシュミレーションする
収入の予測を立てる
まず、クリニック開業を考えた時、最初に行うのは「どこで開業するか」です。この「どこで」の元となるデータが、「診療圏調査」と呼ばれるもの。分かりやすくいえば「開業予定地で、1日あたりに見込まれる来院患者数を算出する調査」です。具体的には
開業するクリニックの診療圏
診療圏内の人口
その地域の「受療率」
などを用いて、綿密な計算を行います。
その結果、「どの地に何科のクリニックを開業すると、1日あたり何人くらいの患者が来るか」が求められます。あとはこれに、予測される診療内容の保険点数をかけて、収入の予測を立てることになります。
調達が必要な資金額を算出する
一言でクリニック開業といっても、戸建ての建物を建築するのか、医療モールの中に入るのか、どのような内装とするか、必要な部屋はいくつあるのか、どのような医療機器をそろえるべきか、元とすべきデータは膨大です。クリニック開業当時は、前項の「収入予測」に見合うだけの患者数は望めないため、当面の運転資金も必要です。
これらをすべて算出するには、候補となる土地や建物を見学し、複数業者に見積もりを取り、最適な医療機器を選択してその見積りを取り、さらに雇用するスタッフのスキルやそれに見合った給与設定もしなくてはいけません。ここまくると、さすがに「医業の本分」とはかけ離れますので、例えば、現在どこかの医療機関で医師として働いているなら、全てを自分でやろうとすると、どれだけ時間があっても足りません。その間に、良い物件は手が出せなくなることもあります。
また、必要な資金額が算出できたとしても、その借入の交渉は、金融機関などと行うことになります。場合によっては複数の医療機関との交渉が必要になりますので、その間、医業に専念することはかなり難しくなるでしょう。
開業後の収益についてシュミレーションする
人は、何かしらの目標に向かって動いている時、物事を良い方に考えがちです。開業した途端に待合室に患者があふれることは非常に稀ですし、競合する医療機関が近いエリアで成功しているような土地では、差別化を図らないと新規患者の増加は難しくなります。
また、開業すればそれなりにスタッフを雇用するわけですから、開業日前からのスタッフの給与についても、予め支払うことを前提としておかなくてはなりません。つまりこの期間は、収入が無いにも関わらず、支出は膨らんでしまうのです。
こういったマイナス面を考慮したシュミレーションは、当事者であればあまり考えたくはないこと。しかし、これを避けてしまうと、開業後数か月から1年程度で、資金繰りがショートする可能性があります。
第三者であるプロの目を借りること
これまでに挙がっている項目は、医師としては難しいことも多々ありますが、これを専門としているプロ=開業コンサルタント ならばどうでしょうか。開業コンサルタントは、これまでにも多くの「クリニック開業」をサポートしています。その土地ならではの考え方や、計算の方法もあります。
医師が自分の城である、クリニックを開業するまでの道のりは、決して楽ではありません。開業後も、医師の本分である「診療」の他に、さまざまな問題が持ち上がることも珍しくありません。特に資金面での余裕がなければ、開業後短期間で、城を崩すことにもなりかねません。それほど、開業前の事業計画は重要なものなのです。
事業計画の信用性、信頼性が高いほど、金融機関への融資交渉はスムーズになり、開業後の運営も、手助けしてくれるものとなります。