2024.10.12クリニック開業の心得
医院併用住宅は、クリニックと住居が同一の建物内に併設されており、住宅街にあるクリニックによく見られます。同一の建物内とはいえ、医療スペースと居住スペースは明確に分離されています。一般的には、一階をクリニックとして、二階以上を住宅として設計されることが多くなっています。
今回は医院併用住宅のメリットとデメリットについて紹介していきます。
通勤する必要がないので、身体への負担が軽減され、時間の余裕が生まれます。その分、業務に時間を使うこともできますし、家族と過ごしたり、趣味に使う時間も増えるでしょう。
急患の来院に対応しやすくなると同時に、勤務中に自宅で起きた急な事態にも素早く対応できるため、特に小さなお子さんのいる家庭にとっては大変便利です。
クリニックと自宅を別に持つ場合、クリニックの建築費に加えて、自宅分のローンも支払わなければなりません。その点、医院併用住宅であれば、医院部分も含めて一軒分の金銭的負担で済みますので、大きなコスト減になります。
また、医院併用住宅の場合、クリニックでありながら住居としてのスペースがあるため、住宅ローン控除を受けることができます。
実際に院長がその地で暮らすことにより、地域に根差しているイメージが自然に構築されます。町内会の活動で顔を合わせたり、子ども同士が同級生だったりすることで、院長自身がコミュニティの一員となりますので、地域との密着度は高まります。そのため医院併用住宅は、地域住民の集患にはプラスに働くとされています。
患者に自宅が特定されているため、医師個人や家族の生活状況を知られやすくなります。どういった車に乗っているか、子どもがどの学校に通っているかなど、プライバシーを詮索されたり、個人情報が広がったりすることも考えられます。
診療を通して患者から個人的な恨みを持たれた場合など、深刻なリスクに繋がることもあります。
自宅との距離が近いゆえに、仕事とプライベートの切り替えが難しいことも、デメリットとして挙げられます。夜間でも急患に対応せざるを得なかったり、逆に、仕事中にも家庭のことが気になったりと、公私のバランスのとり方が難しいという声もあります。
一般的に医師は裕福だと考えられていますので、自宅が判明していることで、空き巣や強盗の被害に遭う危険性が高まります。家族が安全な生活を送るためにも、セキュリティー面の対策は万全にする必要があります。昨今では、ホームセキュリティ会社に警備を依頼するケースが多いようです。
暮らしやすい医院併用住宅を実現するには、医師本人と家族のプライベートを守るために、設計段階で工夫を凝らす必要があります。クリニックと自宅の入口を分けるのはもちろん、一見しただけでは住居の入口が分からないようにしたり、通りから見えにくい場所にしたりなどの工夫が必要です。可能であれば、駐車場にもシャッターを設置しましょう。
いずれにしても、医院併用住宅の設計実績が多い住宅メーカーや建築士に依頼するといいでしょう。
時間やコストの面でメリットが大きい医院併用住宅ですが、デメリットもあります。医院併用住宅を採用する場合には、プライベートを守る工夫が必要不可欠でしょう。