2024.05.11クリニック開業の心得
継承開業とは、院長の高齢化などを理由に、すでに存在するクリニックを譲り受けて開業する方法を指します。昔から親族に医師がいる場合には、親族間での事業継承がなされてきましたが、近年では継承者のいないクリニックが増えているため、第三者へとクリニックの経営を委ねる「継承開業」が増加しています。
今回は、新規開業と継承開業ではどのような違いが生じるのか、そのようなメリット・デメリットがあるのかを考えていきましょう。
新規でクリニックを開業する場合、土地の取得や建物の建設などの費用に加え、医療機器の購入費など莫大な開業コストがかかります。しかし、継承開業を行うことでこれらが不要になりますので、コスト面での大幅な負担減が見込めます。
また、開業までにかかる時間と手間の削減にもなります。
クリニックの経営は患者が来院して初めて成り立ちます。新規で開業する場合、開業後しばらくはクリニックの知名度もありませんので、集患に頭を悩ませる経営者は少なくありません。
継承開業の場合、すでにかかりつけとして継続して来院されている患者が多くいるため、開業と同時にほぼ安定した経営が見込めるでしょう。
近年、看護師をはじめとする医療系の人材が不足している背景から、新規開業の場合、良質な人材を雇用して育成するために、多くの時間や労力がかかってしまいます。
その点、継承開業では、前経営者のもとで働いていた経験豊富なスタッフの雇用を引き継ぐことができます。求人や教育にかかる手間とコストも省け、開業当初から円滑な運営を見込むことができます。
慣れ親しんだスタッフがいることで、既存の患者も通院しやすくなるでしょう。
継承開業の場合、クリニック自体の施設の老朽化が問題になることがあります。一旦開業してしまうと、大規模な改修をするタイミングはなかなかありません。気になるところは、継承を機にメンテナンスしておきましょう。
既存の医療機器もメンテナンスをしておきましょう。突然の不具合などが起きれば、想定外の出費も考えられます。事前に機器の状態を確認し、余裕をもって予算を組む必要があります。
スタッフの再雇用は大きなメリットである反面、人間関係のトラブルまで引き継いでしまうリスクを伴います。長く働いているスタッフには、経験に基づくプライドや、自分なりのやり方があるものです。それまで有能な働き手であったとしても、新しい経営者のもとで能力を発揮してくれるとは限りません。
スタッフを引き継ぐ際は、事前のヒアリングなどでそれぞれの能力と個性を把握し、経営者自身と考え方の大きな違いはないか、確認しておきましょう。また、スタッフ同士の人間関係の問題があるかどうかも、確認をしておくといいでしょう。
新規で開業をするより明らかに低コストなうえ、集患の不安にかられることもない継承開業は、最低限のリスクでクリニックを開業できる、非常に有効な手段です。しかし、施設の老朽化や医療機器の不具合、スタッフ同士の人間関係のトラブルなど、継承開業ならではのデメリットもないわけではありません。
これらの問題を慌てることなく解決するためには、事前の確認を徹底しておくことが重要です。設備からスタッフまでをつぶさに観察し、クリニック内の様子を把握してから、継承の手続きを進めるようにしましょう。