2023.12.04クリニック開業の心得
勤務医から開業医としてクリニック開業をお考えの方は、すでに医療法人化されている先生方のお話を聞く機会も多いかと思います。今回は、実際に医療法人になるとどうなるのか、メリットやデメリットを踏まえてご紹介したいと思います。
クリニックを開業すると、院長は個人事業主になります。個人事業では、所得にもよりますが、最大50%以上もの税金がかかってしまいます。しかし医療法人化をすると医療法人から「給与」として報酬が支払われるので、会社員と同様の仕組みで、給与所得控除を受けられるようになります。
また、ご家族を役員として採用し、役員報酬を分散することで、家族単位での納税額を軽くすることができます。
医療法人になると、現在のクリニックの分院を開いたり、介護事業施設の開設も可能になります。事業を拡大することで経営者としてのやりがいを感じることができるでしょう。
ご自身のお子様も医師の道を目指されており、将来的にクリニックを継承することになった時、個人事業のクリニックだと多額の相続税がかかってしまいます。これに対し医療法人の場合は、節税と同時に、事業継承の手続きも容易になります。
医療法人化すると、役員が退職する際に退職金を受け取ることができます。退職所得は税法上特別な取り扱いがなされているため、法人に貯蓄してきた資産を低税率で受け取ることができます。
医療法人化すると、毎年の決算処理が煩雑になります。事業報告書や資産登記、理事会の議事録なども必要になります。
また、個人事業であれば任意だった社会保険と厚生年金への加入義務が発生します。
なお、個人で借りた開業資金のうち運転資金分に関しては、法人で引き継ぐことができません。個人で完済する必要があります。
以下の四つの要件を満たしておく必要があります。
・社員が三名以上いること。
・最低でも役員として理事が三名、監事が一名いること。
・一か所以上の病院・診療所・介護老人保健施設があること
・医療行為に必要な設備・器具があること
・年間支出予算の二か月分の運転資金があること
・個人時代の設備を買い取る場合は別途そのための資金があること
・医院の土地・建物は医療法人所有のものか、もしくは長期の賃貸借契約が担保されていること
・既存の法人と同様の法人名を使用していない
・誇大広告にならないような法人名であること
・二つ以上の医療施設を保有する場合、それぞれの医療施設の管理者が事実上の雇用関係にないこと
医療法人になるには以下の手続きが必要になります。
①設立事前登録
②医療法人設立説明会
③定款の作成
④設立総会の開催
⑤設立許可申請書の作成、提出
⑥設立許可申請書の審査
⑦設立許可書受領
⑧設立登記申請書類の作成
⑨登記完了
自治体によって異なりますが、基本的に年に二回の受付期間を設けてます。しかし期間はまちまちになりますので、こちらも事前に開業のタイミングと合わせて確認しておきましょう。
医療法人になると、節税効果をはじめ様々なメリットがあることがわかりました。
ただし、時間を要する手続きや細かな要件を満たさなければならないなど、事前に確認しなければならないことも多いので、時間に余裕を持ったスケジュールで動いた方がいいでしょう。開業後、業務が軌道にのったタイミングで医療法人化されるのもいいかもしれません。