2022.01.25クリニック開業の心得
患者さんに薬を渡す方法には、院内処方と院外処方があります。現在、多くのクリニックでは院外処方が選択されています。では、なぜ院外処方が増えているのでしょうか?
ここでは院外処方のメリットとデメリットについて紹介していきます。
厚生労働省の報告によると、昭和49年の診療報酬の改定を機に院外処方が増加していると報告されています。昭和45年には院外の薬局で調剤を受けた処方箋受取率はわずか0.6%に過ぎませんでしたが、平成29年には72.8%と、約7割の患者が院外処方を利用されていることがわかります。
この結果を見ると、クリニックにとって院外処方を選択するメリットが多いことがうかがえます。
では、院外処方を選択すると、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。
院外処方の最大のメリットは、処方内容を医師と院外の薬剤師で二重チェックできることです。飲み合わせの管理や調剤ミス防止を薬剤師に委ねることで、予期せぬ医療事故を防ぎ、患者の安全を守ることにも繋がります。また、薬剤師が間に入ることで患者の薬に対する不安を軽減することができます。
院内処方を採用した場合、患者に処方する薬を自院で購入するため、多くの費用がかかります。また、薬を置く場所の確保、分包機や藥袋も必要となるでしょう。薬剤師を自院で採用すれば人件費もかかります。これらの費用を考えると、院外処方にはコスト面でのメリットがあると考えられます。
院内処方の場合、自院で薬剤師を雇用しない限りは、医師の指示のもとスタッフが調剤や説明を担当することになります。医師自身が薬剤師の役割を兼ねる形となるため、労働負担が増大します。
院外処方を採用した場合、処方箋に書かれた薬があればどこの薬局でも薬を購入することができます。例えば、今日は時間がないから明日薬をもらいたい、家の近くの馴染みの薬局で薬をもらいたいなど、患者の都合で薬局を選び受け取ることができます。
院外処方の場合、患者は受診後に院外の薬局に移動しなければなりません。そのため患者にとっては、待ち時間が多くなる、会計を二度しなければならない等のデメリットがあります。また、薬剤師から再度問診を受ける場合もあり、体調の悪い患者にとっては大きな負担となる可能性があります。
そのため、移動の負担を少しでも軽減するよう、多くの調剤薬局がクリニックと隣接しています。
院外処方は院内処方と比較して患者の経済的負担が大きくなります。調剤技術料に薬学管理料、調剤料、調剤基本料が上乗せされるためで、一般的には院内処方の約3倍の費用がかかるとされています。これは薬剤師が患者の飲んでいる薬を記録したり、薬の飲み方などを指導したりするために必要な費用です。
ここまでお読みいただいくとわかるように、医療機関にとって院内処方を選択する利点は多くありません。調剤ミス防止という最も重要な観点に立てば、クリニックにとっても患者にとっても院外処方のメリットは大きいと言えます。
その一方で、患者に移動と金銭的な負担をさせないため、院内処方を貫くクリニックもあります。どちらの方法が自院に向いているかを見極めましょう。