2025.03.19トレンド・ニュース
2024年4月、医師の働き方改革がスタートしました。医師の働き方改革とは、医師の長時間労働の改善を目的とした法改正で、労働時間や連続勤務時間の制限、勤務間インターバルの規制など、医師の健康確保のための取り組みが定められています。
この制度の対象は、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の勤務医であり、クリニック経営者には一見関係がないように思えるかもしれません。しかし、非常勤医師の確保や地域医療の負担増加など、クリニックにも影響を及ぼすため、開業医にとっても無関係ではありません。同じ医師として、制度の内容を正しく理解し、適切に対応することが求められます。
近年注目されている長時間労働は、精神疾患による労働意欲の低下や出生率の低下を通じて、人口減少を加速させる要因とされています。医師も例外ではなく、日本の医療提供体制は、これまで医師の自己犠牲によって支えられてきたとも言えます。
この改革では、効率的で質の高い医療を提供しつつ、医師の心身の健康を守ることを目的としています。
1.労働時間の上限規制の導入
2.タスク・シフト/シェアの推進
3.地域医療・かかりつけ医の役割強化
従来、医師は長時間労働が常態化しており、過労による健康被害や離職が問題となっていました。2024年4月からは、時間外労働の上限規制が導入され、特例を除き年間960時間が上限となりました。これにより、医師の過重労働を防ぎ、持続可能な勤務環境の実現を目指します。
医師に対する時間外労働の上限は、一般企業とは異なり、以下のように3つの基準に応じた上限が適用されています。
年間 | 月間 | |
原則 | 年/960時間 | 月/100時間未満 |
A水準 | 年/960時間 | 月/100時間未満
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B水準・C水準 | 年/1860時間 | 月/100時間未満 |
医師の負担を軽減するために、看護師や薬剤師、診療放射線技師などの医療スタッフへの業務分担(タスク・シフト/シェア)が推奨されています。これにより、医師が本来の診療業務に集中できる環境を整え、医療の質を維持しながら業務の効率化を図ることが可能となります。
病院勤務医の負担軽減には、地域のクリニックやかかりつけ医との連携が重要です。救急対応や慢性疾患の管理を分担することで、医師の労働時間を適正化し、医療提供体制の均衡を保つことが求められます。地域ぐるみでの支援を進めることで、患者にとっても安心できる医療環境を整えることができます。
自治体は医師の働き方改革に向け、開業医にも地域医療の支援を呼びかけています。非常勤医師の確保、診療負担の分散、在宅医療の推進などを通じ、勤務医の負担軽減に協力することが求められています。地域医療の安定には、開業医の積極的な連携が不可欠です。制度を理解し、地域全体で持続可能な医療提供体制の構築に貢献しましょう。
働き方改革関連法は2019年4月に施行され、5年間の準備期間が設けられていました。しかし、その間に新型コロナウイルスの影響で医療現場は混乱し、多くの医療従事者が精神的・肉体的に疲弊し、離職するケースも増えました。
こうした状況の中で進められた今回の改革には、まだ多くの課題が残っています。その解決には、医療従事者がチームとして協力し、医師の負担を軽減する仕組みを導入することが不可欠です。また、開業医やかかりつけ医による地域全体での支援体制の強化も、今後ますます求められるでしょう。