2025.04.25クリニック開業の心得
これから新たにクリニックを開業しようと考えている方にとって、立地選びは大きな悩みの一つだと思います。誰もが理想のクリニックを実現したいと考えるなかで、開業形態によって得られるメリットや、注意点も異なります。
例えばテナントビルでの開業では、駅の近くや人通りの多い市街地など、集客に有利な立地であることが大きな魅力です。一方、戸建てでの開業は、外観から内装まで自由に設計でき、自分の理想をより具体的に反映しやすいという利点があります。それぞれにデメリットも存在します。テナントと戸建て、それぞれの特徴を理解したうえで、ご自身の方針や理想に合った開業スタイルを選びましょう。
テナントでの開業は、初期費用を抑えられる点が大きな魅力です。一般内科の場合、テナントタイプの開業資金は約6,000万円程度とされており、戸建て開業に比べて大幅にコストを抑えることができます。戸建てでは土地や建物の取得・建設費が必要となり、1〜2億円に達するケースもあります。資金に限りがある場合や、スピーディな開業を目指す場合には、テナント開業は有力な選択肢です。
一方で、テナント物件には制約もあります。ビル内の他のテナントとの兼ね合いから、看板の設置や外観の視認性が限定され、院長の希望が叶わないことが、認知度の向上に時間がかかることがあります。
また、医療機関としての利用を前提としない物件では、電気容量、給排水、床の耐荷重、搬入経路の確保などの点で改修が必要となり、追加の工事費用が発生する可能性もあります。入居を決める前に、医療機関としての適合性をしっかりと確認することが重要です。
戸建て開業の場合、建物の外観や内装などには院長ご自身が携わることができます。また、着工すれば早い時点で周囲の目に触れますので、近隣住民に認知されやすい点もメリットとして挙げられます。
また、高齢患者などが増加する昨今、車椅子を利用される方も増えてくることが想定されます。戸建てのクリニックは路面に入口を設けるため、診察に行きやすいという点は、患者に選ばれる一つの要因となるでしょう。
さらに、土地・建物を担保とすることで金融機関からの融資も受けやすいでしょう。
戸建てとなると、やはり土地の取得費用がかかります。地価が高いエリアに行けば人口が増える分、集患に悩まされる可能性は下がりますが、土地の取得は難航する傾向があります。
一方、地価の安いエリアは人口も少ないと考えられるので、人の行き来がない場合の集患に苦労し、経営問題に繋がることもあります。
コストを抑えつつ早期開業を目指す場合はテナント開業が有効ですが、物件がクリニックに適しているか事前に建設会社などに確認する必要があります。戸建て開業は設計の自由度が高く、クリニックの特徴を表現しやすい反面、立地やコストとのバランスを慎重に見極めることが求められます。
いずれの選択であっても、患者にとって通いやすく信頼される医療体制を整え、初診だけでなく長く通い続けてもらえるクリニックを目指すことが重要です。